「移民国家」シンガポールの憂鬱
国民中間層に「愛国心」なし
2010年1月号
年末のシンガポールは繁華街のオーチャード通りを中心にクリスマスのイルミネーションが輝き、ショッピングや食事を楽しむシンガポール人、観光客で賑わいをみせた。治安がよく、清潔でインフラが整備され、英語が通用する都市国家は「ガーデンシティー」と呼ばれるだけあり華やいでいる。
しかし一方で、シンガポールには「明るい北朝鮮」「リー王朝独裁国家」などの評価もあるように「陰」の部分がある。その陰は、華やかに輝く光の幻惑に覆われ、短期滞在の観光客の目に触れることはない。陰から光は見えても、光るところから陰は見えない。
「選択的」移民政策の陰
同国が抱える「濃い陰」のひとつは、政府が積極的に進めている「移民政策」である。シンガポールの「住民」は四百九十九万人(二〇〇九年)だ。このうち、シンガポール国籍と、永住権取得者の合計は三百七十三万人しかいない。残る四分の一近くの百二十六万人が「移民」と呼ぶべき人たちだ。そして、この「移民」がシンガポールの「下」と「上」を支えている点がこの国の特・・・