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グルジア「NATO加盟阻止」に仏独団結

ロシアへの擦り寄り如実

2010年1月号

 バルト海からの寒風が吹き抜け、どんよりとした灰色の雲から時折冷たい雨がぱらつく十一月下旬のある午前、サンクトペテルブルクの港の岸壁に、全長二百メートルあまりの軍艦が横付けした。一見、空母のようなシルエットのこの艦船は、以前、同市近郊のクロンシュタット港を拠点としていたロシアのバルト艦隊の所属艦ではない。船尾に掲げられたのは三色旗。原子力空母シャルル・ド・ゴールに次ぐ約二万トンの大きさを誇る、仏海軍の強襲揚陸艦ミストラルであった。
 

前代未聞の軍艦売却


 同艦は九百人の兵員が収容可能で、ヘリコプター十六機のほか大型戦車四十両、上陸用舟艇四隻を搭載可能。敵地上陸作戦を決行できる。今回の寄港の表向き理由は「友好訪問」だったが、サンクトペテルブルクと目と鼻の先のエストニアのみならず、ラトビア、リトアニアのバルト三国は、ミストラルの入港に一斉に緊張した。旧ソ連崩壊から二十年近く経とうとする今も、三国ともロシアに対する恐怖感を捨てられずにいる。そのロシアが自国海軍に欠落した戦闘能力を有するこの・・・