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「国家観なき宰相」の危険外交

「手本」は松下圭一と永井陽之助

2010年7月号特別リポート

 参議院選挙を目前にして、与野党入り乱れた論戦が朝から晩まで繰り広げられている。わけても、菅直人首相の「消費税一〇%」発言は至るところで大騒ぎとなっているが、消費税が大幅に引き上げられたにしてもそれ自体で国は滅びない。世界の興亡史で明らかなのは、外交・防衛の努力を怠ったか、方向性を誤った国がいかなる運命を辿ったかであろう。
 菅首相の外交・防衛に関する発言は極めて少ない。直近の材料は去る六月十一日に行った所信表明演説だが、異例なことに自らの原点として政治理念では松下圭一・法政大学名誉教授、国際政治論では故永井陽之助・青山学院大学名誉教授の二人を挙げた。松下氏を下敷きにした首相の国家観は一国の最高指導者として首を傾げたくなるが、さらに四十四、五年前に「現実主義者」と称された永井氏の著作を持ち出して自分を変身させようと試みた。が、手品としては古すぎよう。
 幼稚な「友愛精神」で日本外交の根幹を自ら破壊してしまった鳩山由紀夫前首相の印象を払拭しようとして打ち出した「現実主義外交」は、台頭する中国、とくにその軍事力に目を塞ぎ、日本の防衛政策には格別の工夫はない。陸、海、空三・・・