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社会・文化

「小児科消失」という愚かな人災

「子育て不安」を黙殺する厚労省

2025年4月号

 子どもが風邪を引いたときなど、気軽に診察してもらえる小児科クリニックが全国で減っている。「夜間に診てくれる先生がみつからない」「病児保育の予約ができない」といった子育て世代の切実な声は高まるばかりだ。医師が普段から何でも診てくれ相談に乗ってくれるプライマリ・ケアは危機に瀕している。背景には、小児科に厳しい診療報酬の仕組みがある。
 厚生労働省の「令和5年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によれば、全国の小児科クリニックは1万7778施設で、1984年の2万9164施設から39%減少した。この間に、クリニックの総数は34%増えているから、小児科の減少は際立っている。
 小児科クリニックが減り続けるのは少子化が進み、患者数が減っていることも影響しているが、「小児科の診療報酬が安く、経営を維持できないから」(都内クリニック経営者)だという。
 クラウド型電子カルテを販売するCLIUS社が厚労省のデータを基に分析した調査によると、2020年度の関東地方の小児科の患者1人あたりの平均診療報酬は974点(1点10円)で、内科1590点、外科1347点を下回・・・

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