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連載

金融の世紀

第28 回【赤い相場師とユーロ債の誕生】
黒木 亮

2025年4月号

 国際金融上の一大ファクターとなる大規模なユーロダラーが誕生したのは、第2次世界大戦後のことである。
 それ以前の1920年代にも、ヨーロッパに活発なドル預金の市場はあるにはあった。しかし30年代に入ると徐々に縮小し始め、その後、大戦によって消滅し、大きな影響力は持たずに終わった。なおユーロダラーに「ユーロ」という呼び名が付いているのは、元々ヨーロッパの銀行に預け入れられたという歴史的経緯による。
 戦後、今日的意味でのユーロダラーが誕生したのには、二つの要因があった。一つは、米国が大戦で疲弊した西ヨーロッパ諸国復興のため、「マーシャル・プラン」にもとづき、約130億ドル(現在の1730億ドル=約26兆7千億円程度)という巨額の資金を無償または低金利で供与したこと。もう一つは、ヨーロッパをはじめとする各国が世界最大の消費市場になった米国への輸出で多額の米ドルを獲得したことだ。
 ユーロダラー誕生の嚆矢は、49年に、中国が保有していたドル資金の多くをパリにあった北欧商業銀行(Banque Commerciale pour l'Europe du No・・・

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