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連載

新・危機管理のノウハウ Vol.01

【プライオリティー】すべてを守ろうとするな
マーク・ケルトン

2025年4月号

 私が米中央情報局(CIA)に入局したのは、冷戦真っ只中の1981年だった。その後の34年のキャリアの中で、モスクワ支局長としてウラジーミル・プーチン大統領誕生も目撃した。4つの地域で支局長を務め米国へ帰国後は幹部として、主に中国と対峙してきた。
 ベールに包まれているとはいえ、CIAの仕事はルールと規制で管理されている。もっとも、諜報機関の任務は、単なる仕事ではなく、職員は「この任務を担いたい」という強い衝動で働く。自国と同盟国を守るために、世人とは全く違う視点で世界を見ることになる。国家的危機管理の世界で戦ってきた私の経験が参考になれば幸いだ。
 CIA勤務時代、私は部下からこんな疑問をよく投げかけられた。
「CIAはリスクを嫌う組織か」
 答えはいつも「NO」。これは質問自体が間違っており、正しくは、「CIAにはリスクを管理する体制があるのか」と聞くべきだ。
 これは企業にも当てはまる。ビジネスでもリスクを負うのは当然だが、その管理には深い経験が必要になる。
 リスク管理の要諦は何か。それは、危険性の全体像を把握すること・・・

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