ドナルド・トランプ米大統領は、生き馬の目を抜くニューヨークの不動産業界でのし上がった。
　その剛腕ビジネスマンが繰り返し「ぜひあそこが欲しい」と熱望し、「なあ、譲ってくれよ」と持ち主に言い募ったとなれば、よほど価値のある物件に違いない。
　それがグリーンランドだ。
　日本の五・七倍もの面積を持ち、広大な土地と分厚い氷の下には、レアアースや銅、亜鉛、金などの鉱物資源が眠っている。デジタル経済の需要激増を受け、グリーンランドの評価は急上昇中だ。世界一大きな島は、デンマーク領である。米国だけでなく、中国、ロシア、欧州連合（ＥＵ）が強い関心を持っている。
　トランプ大統領がデンマークへの長電話で食い下がったのは、二〇一九年に続いてこれで二度目だ。いずれも電話を受けたのは、メッテ・フレデリクセン首相。彼女によれば、大統領は大半の時間、非常に強引かつ無礼、無神経だったようだ。首相は相応の応対をした。だが、トランプ氏は「感じの悪い、不愉快な会話だった」と後に評した。
　ムテ・エーエデはこの島の自治政府を、「首相」として二〇二一年から率いている。{b・・・