三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月刊総合情報誌

社会・文化

美術界にまだまだ溢れる「贋作」

名画と偽物が織りなす欲望の歴史

2025年3月号

 近頃美術界では真贋報道が賑わいを見せている。高知県立美術館が購入したハインリヒ・カンペンドンク(1889-1957)の《少女と白鳥》や、徳島県立近代美術館が購入したジャン・メッツァンジェの《自転車乗り》が贋作者ヴォルフガング・ベルトラッキ自身の証言により、彼の手による贋作との疑いがかけられている。いずれの作品にも鑑定書がついていた。しかし、美術市場で贋作が溢れていることは常識である。
 海外では2024年7月に、オーストラリア・タスマニア州の美術館女性用トイレに展示されたピカソその他が贋作であることが判明し、10月にはアムステルダムのゴッホ美術館が、所蔵する作品3点が贋作であることを明らかにした。さらに11月にはヨーロッパ全土で暗躍していた贋作者集団がイタリアで摘発され、その被害総額は300億円を超えるという。
 国内でも以前からこうした事例は後を絶たない。大原美術館のゴッホの《アルピーユの道》が1984年に贋作であることが判明した。またレオナルド・ダ・ヴィンチの素描をめぐって日伊の国際問題にもなった「月光荘事件」では、結局それが真筆ではないことが判明した。またS・・・