智子皇后（現上皇后）は平成二十五（二〇一三）年十月の七十九歳の誕生日の感想で、前年一月に天皇（現上皇）とともにあきる野市を訪れて郷土館で五日市憲法草案に接したときの感動をつづった。戊辰戦争で敗れた仙台藩士千葉卓三郎が受洗して教師となり、三十一歳で病没する直前に仲間とともに作成した私擬憲法で、その民衆の息吹にふれた感動があつい筆致で記されていた。
「明治憲法の公布（明治二十二年）に先立ち、地域の小学校の教員、地主や農民が、寄り合い、討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で、基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務、法の下の平等、更に言論の自由、信教の自由など、二百四条が書かれており、地方自治権等についても記されています。当時これに類する民間の憲法草案が、日本各地の少なくとも四十数か所で作られていたと聞きましたが、近代日本の黎明期に生きた人々の、政治参加への強い意欲や、自国の未来にかけた熱い願いに触れ、深い感銘を覚えたことでした」
　そして締めくくりに「長い鎖国を経た十九世紀末の日本で、市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍・・・