三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月刊総合情報誌

経済

エーザイ「業績好調」は本当か

認知症新薬を巡る不都合な真実

2025年3月号

 製薬大手エーザイの主力は、アルツハイマー病治療薬のレカネマブ(商品名レケンビ)と悪性腫瘍治療薬のレンバチニブ(商品名レンビマ)である。二月七日発表の決算は増収増益で、二つの薬剤の売り上げは全体の四六%を占めた。だが市場の反応は芳しくない。実は屋台骨である二本柱の先行きが「黄信号」なのだ。
 レカネマブは注目の新薬として大きく報じられた。エーザイが米バイオジェン社と共同開発した薬剤で二三年九月までに米国と日本が承認した。現在、中国、韓国、香港、イスラエル、アラブ首長国連邦、英国、メキシコ、マカオで承認されている。しかし、この薬には弱点がある。効果と副作用に懸念があることだ。
 エーザイが実施した臨床第三相試験では、認知機能の低下を二七%遅らせることが示されたが、「患者に有意な効果をもたらす証拠はほとんどない」と考える専門家が多い。米スタンフォード大学記憶障害センターのマイケル・グレイシャス教授は「その効果は、患者や担当医には認識できないほど小さい可能性が高い」と述べている。
 副作用は無視できない。一二・六%の患者で脳浮腫、一七・三%で脳出血が確認されてい・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます