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連載

金融の世紀

第27回【ユーロダラー市場の誕生】
黒木 亮

2025年3月号

 二十一世紀初頭、我々は世紀の国際金融バトルを目の当たりにした。米国のヘッジファンドが、南米屈指の大国、アルゼンチンに咬み付き、十五年間に及ぶ法廷闘争の末、同国を屈服させたのだ。
 幕開けは、二〇〇一年のアルゼンチンによる対外債務のデフォルト(不履行)だった。これを好機と見た米国のヘッジファンド、エリオット・マネジメントが、傘下のNML Capital Limited(以下NMLと略)を通じ、額面六億千七百万ドルのアルゼンチン国債を、額面の三割以下(推定)という安値で買い集めた。同ファンドは、ユダヤ系米国人で「法律書を携えたハゲタカ」の異名をとるポール・シンガーが創業した巨大ヘッジファンドだ。
 デフォルト後、アルゼンチン政府は〇五年と一〇年に債権額の七割以上をカットするという、債務再編策を一方的に宣言し、ならず者債務国と批判された。しかし、約九二パーセントの債権者(投資家)は、同国の資力からそれ以上の回収は望めないと見て、渋々債務カットに応じた。
 しかしNMLはこのやり方に納得せず、金利やペナルティを含む全額の支払いを求め、敢然とニューヨーク州南部連邦・・・

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