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経済

《クローズ・アップ》北林 太郎(農林中金次期理事長)

「組織解体」を見据えた軽量事務屋

2025年3月号

 外国債券の運用失敗で、二〇二五年三月期に一兆九千億円程度の巨額赤字に転落する農林中央金庫は奥和登理事長が引責辞任し、北林太郎常務執行役員(五十四歳)が次期理事長に就任する。
「組織解体の邪魔にならない軽量トップという意味だろう」。農林中金OBのひとりは今回の理事長人事をこう読む。農林中金理事長といえば、辞任する奥氏の二代前の上野博史氏までは農林水産省の次官経験者が就任していたポスト。農政の立場から全国の農業協同組合(JA)に強い影響力を持ち、自民党農水族とも渡り合える大物しか務められないとみられていた。
 状況が変わったのは農林中金自身の大失敗。〇七年秋に噴出した米サブプライムローン問題で、不良債権まみれとなった米連邦住宅抵当公庫(ファニー・メイ)などの債券を五兆円以上抱えていた農林中金は経営破綻の瀬戸際まで追い込まれた。大手銀行などが早めに手を引いた不動産担保商品にとどまった判断ミスだった。上野氏は理事長を辞任。「役人上がりに資金運用は無理」との声を追い風に河野良雄氏が初の生え抜き理事長となり、全国の農協に泣きついて一兆九千億円の増資に応じてもらい、農林中金は生・・・

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