大往生考 第63話
被災地が求める医療とは
佐野 海那斗
2025年3月号
東日本大震災から十四年。この一月は能登半島地震から一年、阪神・淡路大震災からは三十年の節目が重なり、改めて日本が災害大国であることを思い知らされる。
先日、災害医療に関するシンポジウムを傍聴した。阪神・淡路、東日本、能登半島地震で、被災地を支援した医師や看護師が登壇し、自らの経験を紹介していた。瓦礫の下から救出された患者を治療する救急医、津波で家族を失った子どものメンタルをケアする看護師、その献身的な行動に感銘を受けたが、同時にある種の物足りなさも感じた。医療者にとっての美談が強調され、被災者の日常生活が見えてこなかったからだ。
二月に入り、大学時代の後輩と酒を飲む機会があった。この医師は東日本大震災後、福島県の病院に異動し、その後は現地で開業した。彼の話はリアルだった。「被災地が困っているのは認知症」と強調し、自らが診療した患者の経験を紹介してくれた。
八十代の女性、Aさんは同い年の夫と二人で暮らしていた。夫は元公務員で、Aさんは専業主婦だった。息子が二人。ともに東京の大学を卒業し、都内の企業に就職して家庭を築いていた。
夫婦の住まい・・・
先日、災害医療に関するシンポジウムを傍聴した。阪神・淡路、東日本、能登半島地震で、被災地を支援した医師や看護師が登壇し、自らの経験を紹介していた。瓦礫の下から救出された患者を治療する救急医、津波で家族を失った子どものメンタルをケアする看護師、その献身的な行動に感銘を受けたが、同時にある種の物足りなさも感じた。医療者にとっての美談が強調され、被災者の日常生活が見えてこなかったからだ。
二月に入り、大学時代の後輩と酒を飲む機会があった。この医師は東日本大震災後、福島県の病院に異動し、その後は現地で開業した。彼の話はリアルだった。「被災地が困っているのは認知症」と強調し、自らが診療した患者の経験を紹介してくれた。
八十代の女性、Aさんは同い年の夫と二人で暮らしていた。夫は元公務員で、Aさんは専業主婦だった。息子が二人。ともに東京の大学を卒業し、都内の企業に就職して家庭を築いていた。
夫婦の住まい・・・