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連載

現代史の言霊  第83話

三月の抗議-英国「人頭税」反対暴動(一九九〇年 )
伊熊幹雄

2025年3月号

彼らは民主主義に反対する人たちだ
マーガレット・サッチャー(英首相)

「一九八九~九〇年」は東欧革命によりヨーロッパが激変した年である。同じ欧州で、全く異なる激変を経験していたのが英国だ。
 欧州大陸が共産主義の解体と民主化に突き進んでいた時、この島国はマーガレット・サッチャー首相の「サッチャリズム」を巡り、大騒乱が起きていた。

英国型福祉国家の行き詰まり

 サッチャリズムは今日では、福祉漬けで凋落した英国経済に、再び競争原理、企業家精神を復活させたものとして、理解・評価されている。だが、サッチャー政権の下で福祉制度を解体する作業が進められている間には、国民の相当数から憎まれていた。
 それも当然のことだった。英国型福祉社会は、高所得者層への累進課税によって、手厚い福祉財源を作るのが原則だからだ。
 ところが、高福祉・高負担は永遠には続かない。やがて高所得者層や起業家層は税金に嫌気して、ハングリー精神を失い、結果的・・・

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