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太平洋の新たな火種「ナツナ海」

中国「海洋侵略」に関係国が苦悩

2025年3月号

 中国が影響力を強める太平洋地域で、中国政府と北東アジアや東南アジア各国との摩擦が高まっている。中国政府は、この海洋全域を「南シナ海」または「東シナ海」として、一括して「中国の海」としてきた。
 これに対して、インドネシアは南シナ海の一部について「北ナツナ(ナトゥナ)海」との呼称を2017年から導入し、「中国の領海ではない」との主張を強めた。
 国際的な議論が高まる中で、中国政府は、武装した海警局船を、「北ナツナ海」ばかりでなく、インドネシア周辺にある「南ナツナ海(本来のナツナ海)」に再三送り込んでいる。東南アジア諸国連合(ASEAN)の複数の国が、個別に中国と問題を抱えており、各国は「連帯」を模索中だ。中国は各国に個別に圧力をかけ、国際的抵抗を抑えつけようとしている。
 中国政府にとって、海の名前は古来不変であった。東シナ海は「東海」であり、南シナ海は「南海」だ。どちらも「中国の海」であり、永久に変わらない中国の領海であることを意味した。中国外務省の報道官は、インドネシアの「北ナツナ海」という新呼称について記者会見で聞かれると、「南海は南海である」という・・・

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