フランスに広がる「反AI推進」
便利さに背を向ける「逆張り国民」
2025年3月号
人工知能(AI)が浸透する一方で、複雑化する技術への不信やデジタル覇権への懸念も膨らんでいる。2月にパリで開催された「AIアクションサミット」で、フランスのマクロン大統領はデータセンター建設などAI関連に総額1090億ユーロ(約17兆円)を投資すると表明した。トップの威勢の良さを尻目に、仏国民の間ではイノベーションへの期待感は薄く、デジタルから距離を取る動きも出てきている。
「デジタル化を拒否する権利」を打ち出したのは、労使の代表者や一般市民、NGOなどでつくる政府の諮問機関「経済社会環境評議会」だ。職員の対面による対応や紙での申告、通知など従来通りオフラインでの行政サービスを続けるよう提言した。コストがかかりそうだが、市民サービスにこうした考え方を導入する自治体も出てきた。評議会は、行政のデジタル化は必要不可欠としつつ、郵便や電話の長期的な維持も欠かせないと指摘する。
こうした「権利」が支持される背景に、フランスの人口の約三割にあたる「デジタル化脆弱層」の存在がある。政府はコロナ禍のロックダウンをきっかけに2020年、高速通信網の整備や自治体職員の・・・
「デジタル化を拒否する権利」を打ち出したのは、労使の代表者や一般市民、NGOなどでつくる政府の諮問機関「経済社会環境評議会」だ。職員の対面による対応や紙での申告、通知など従来通りオフラインでの行政サービスを続けるよう提言した。コストがかかりそうだが、市民サービスにこうした考え方を導入する自治体も出てきた。評議会は、行政のデジタル化は必要不可欠としつつ、郵便や電話の長期的な維持も欠かせないと指摘する。
こうした「権利」が支持される背景に、フランスの人口の約三割にあたる「デジタル化脆弱層」の存在がある。政府はコロナ禍のロックダウンをきっかけに2020年、高速通信網の整備や自治体職員の・・・