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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》進まぬ「安楽死」

議論も許さぬ異常な日本

2025年2月号

 昨年11月、英国の下院で終末期患者の安楽死を認める法案が可決された。賛成330票、反対275票。法案成立には、下院での再採決、上院の審議を経なければならないが、世論調査では国民の約7割が賛成しており、成立は確実だ。
 成立すると、余命6カ月未満の終末期患者を対象として、本人の明確な意思を2人の医師と裁判官が確認した後に、薬物によって死ぬ権利が認められる。同様の法案は2015年に提出されたときには否決されている。9年を経て、安楽死に対する国民的なコンセンサスが深まったようだ。
 安楽死を認める国は増えつつある。合法化の波はオランダとベルギー(02年)を皮切りに、ルクセンブルク(09年)、スペイン(21年)、ニュージーランド(同)、オーストラリア各州(17〜22年)などの先進国にとどまらず、コロンビア(14年)にも及んでいる。フランスでも22年に終末期医療のあり方を議論する市民会議が設置された。過半数が安楽死に賛同したことを受け、昨年4月にマクロン大統領が安楽死法案を発表し、現在、審議中だ。16年に合法化されたカナダでは、17年に2838件だった安楽死が22年には1万・・・

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