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経済

《企業研究》フジテレビ

日枝独裁終焉で開く「パンドラの箱」

2025年2月号

 利潤を求めて多角化しても、業態を変えても、本業の理念を失った企業はもろい。フジテレビの女性アナウンサーとのトラブルが露見して芸能界引退に追い込まれた中居正広の事案が炙り出したのは、歪んだ企業体質と危機対応能力の欠如だ。簡単に幕引きできるはずもなく、報道機関として、人々を楽しませる番組制作の主体として、矜持を失ったテレビ局の再生は容易ではない。
 問題の所在を五つに整理すると、第一はフジテレビの経営状況と体質、そして、今も事実上の最高権力者である日枝久の存在だ。
 フジテレビ単体の二〇二四年度中間決算では、売上高は一千百五十六億円で、放送収入が九百一億円を占める。営業利益は五億円にとどまり、経常利益は七億九千万円、最終利益は四億二千万円と厳しい状況は、視聴率の長期低迷と並行している。放送収入の二四年度通期の見通しは一千四百八十五億円で、前年度の一千四百七十二億円を少し上回るが、中居問題の影響は織り込まれていない。
 フジテレビへの広告提供を取りやめた企業は七十五社(一月二十一日時点)にのぼり、契約済みのCM枠は公益社団法人ACジャパンの公共広告に差し替えら・・・

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