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戦時下で想う「報道の使命」の重さ

セウヒリ・ムサイェワ (ウクライナ・プラウダ編集長)

2025年2月号

 ―ロシアの侵略がほぼ三年続き、報道はどう変わってきましたか。
 ムサイェワ 二〇二二年の侵略直後は挙国一致で敵に立ち向かい、メディアも全面的に政府を支持した。我々は特にロシアの戦争犯罪の調査報道に注力した。しかし、その年の四月にキーウ州が解放されると、政府が権力を集中させ、自己利益を優先するような面が出てきて、汚職も続いていた。同年十月に政府調達を巡って東部の州で起きた汚職について、侵略後のウクライナ国内メディアとしては初めて告発した。戦争に費やすべき資金が盗まれれば負けてしまう。批判も受けたが、特に前線の兵士から支持された。その後も国防省の横領疑惑の報道などで、メディアの自主規制は徐々に解けた。
 ―戦時下での報道のバランスをどう考えますか。
 ムサイェワ メディアは「権力の監視人」であると自負しているが、戦争への影響も考えるべきだ。特に侵略者への抵抗の象徴である大統領の批判には慎重にならざるをえない。選挙で選ばれていない大統領側近の巨大な権力、軍の人事などには疑問を持つが、大統領の正当性は傷つけてはならないという理解がある。それこそロシアが望んでいる・・・

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