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社会・文化

「西洋古楽器」 その魅力と難題

原初の音色への飽くなき探求

2025年2月号

 二月七日現地時間十一時十五分から開催されるニューヨークのサザビーズでのオークションに、一挺のヴァイオリンが出品される。通称「ヨアヒム=マ・ヴァイオリン」と呼ばれる、一七一四年製のストラディヴァリウスである。この楽器はハンガリー出身のヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒム(一八三一~一九〇七)が一八七九年一月一日にブラームス本人の指揮のもとで「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品七七」を演奏した、由緒ある名器である。その後アメリカのヴァイオリニスト、シホン・マの手に移り二〇〇九年に八十四歳で亡くなるまで所有していた。死後ニューイングランド音楽院に寄贈され、今回同音楽院の奨学金に充てるためオークションに出品されるという。落札予定価格は約十八億円から二十七億円とされる。
 ところで、我々はもはや、この一七一四年に製作されたストラディヴァリの、製作者自身が聴いた音を聴くことはない。現代のピッチの金属弦での演奏に合うよう改造され、新たに顎当ても取り付けられている。現存するほぼすべてのストラディヴァリにはこうした改造が施されている。
 楽器本来の音に対するノスタルジーが、一九六〇年代以・・・

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