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社会・文化

肥満症治療薬の衝撃 ㊦

認知症とがん予防で予期せぬ「効果」

2025年2月号

 認知症、そしてがん発症の予防が加速度的に進むかもしれない。切り札は肥満症治療薬の「GLP-1受容体作動薬」だ。強いインパクトのある研究が世界で進む。後編では、この薬の最大の注目点を最前線から報告する。
「二〇二五年の科学:来年に注目すべきイベント」という記事が、昨年十二月十七日付の英『ネイチャー』誌に掲載された。その中でGLP-1受容体作動薬の効果が期待できそうな複数の疾患の一つにアルツハイマー病を取り上げた。
 認知症は様々な原因で起こるが、もっとも多いのはアルツハイマー病だ。脳の免疫細胞が活性化され、慢性炎症を起こすことで発症すると考えられている。GLP-1受容体作動薬により、炎症を抑制できれば、発症を予防できるかもしれない。研究の焦点はそこだ。

相次ぐ研究報告

 二四年七月、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが、米国で開催されたアルツハイマー病協会国際会議で有望な研究結果を発表した。軽症のアルツハイマー病患者二百四人を対象として、GLP-1受容体作動薬であるリラグルチド・・・

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