テイレシアスの食卓 vol. 23
古典料理と「徴税官」
河井 健司
2025年2月号
銀行口座が差し押さえられた。100万円ほど貯めていた預金は全て没収。当日の朝9時に銀行の担当者から電話で連絡があったが、あちらも驚いている。何か心当たりはありますかと、冷静を装う声で尋ねられたが、こちらとて寝耳に水の話、頭が真っ白である。逆に債権者は誰かと聞くのがやっとであった。その答えは税務署。約2年間の所得税未納分および追徴金として、税務署が口座を差し押さえたのだ。パリで勤め先を退職し、そろそろ日本へ帰国しようと準備していた矢先の出来事だった。あれから20年近く経つが、毎年2月の半ば、確定申告の時期になると当時の苦い記憶がよみがえる。
言うまでもなく所得税は義務として国に納める税である。そして、フランスでは日本と違い公務員以外は皆、自己申告制となっている。筆者はビザ再取得の問題から約2年もの間、労働賃金を得ているにもかかわらず、申告をやめざるを得なかった。さもなくば、厚意を受けた雇用主に迷惑を掛けてしまう恐れがあったのだ。日本企業の駐在員や、政府の仕事で滞仏している人達には無縁の話かも知れないが、ビザと税金は密接に関係している。
当時、フランスの滞在労働許・・・
言うまでもなく所得税は義務として国に納める税である。そして、フランスでは日本と違い公務員以外は皆、自己申告制となっている。筆者はビザ再取得の問題から約2年もの間、労働賃金を得ているにもかかわらず、申告をやめざるを得なかった。さもなくば、厚意を受けた雇用主に迷惑を掛けてしまう恐れがあったのだ。日本企業の駐在員や、政府の仕事で滞仏している人達には無縁の話かも知れないが、ビザと税金は密接に関係している。
当時、フランスの滞在労働許・・・