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欧州を分断する 「性的少数者問題」

右派巻き返しで「権利後退」へ

2025年2月号

 昨夏のパリオリンピック開会式は権威を揶揄する演出で、よくも悪くもタブーをいとわないフランスを改めて印象付けた。だが、国民議会(下院)選で中道・マクロン政権が退潮し、足元では人権擁護など進歩的な施策は鳴りを潜めている。性的少数者の「トランスジェンダー」の権利をめぐり、フランスで保守派の巻き返しの動きが目立ってきた。

保守派の攻勢

 フランス国民教育省が改定作業中の「性教育指針」の草案が報じられると、反同性愛を掲げる市民団体や保守系メディアが一斉に非難した。ジェンダーアイデンティティは、日本語では「性自認」などと訳される。左右両派の教職員組合によれば、草案は「穏当な内容」だったが、保守派は草案に繰り返し登場するこの言葉に反応した。「性自認」を学校で教えることは、若者の安易な「トランスジェンダー化」を助長するとして、新指針の「徹底的な改定」を要求した。
 運動の中心となっているのは、同性婚反対運動から継続的に活動する保守系市民団体だ。キリスト教に基づく伝統的な家族観を重視する。フランスで2013年に同性・・・

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