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社会・文化

肥満症治療薬の衝撃 ㊤

減量以外に 「炎症全般」で効果

2025年1月号

 米国で肥満症治療用のGLP-1受容体作動薬がブームを巻き起こしている。イーロン・マスク氏、カール・ルイス氏、さらにハリウッドスターらがこの薬を利用して減量に成功したことを明かし、SNS上で話題が沸騰している。
 この薬は医療の在り方を抜本的に変える可能性をはらむ。近年の研究により、肥満だけでなく心血管疾患から、がん、認知症まで多くの疾患の進行抑制に関係することが分かってきたからだ。今号と次号で、その最前線を報告する。

心血管疾患、膝痛や感染症にも

 二〇二四年九月、米国のラスカー財団はGLP-1受容体作動薬の開発に貢献した三人の研究者にラスカー賞を授与した。ノーベル賞の前哨戦とも言われる権威ある賞だ。糖尿病や肥満症の治療薬としてだけでなく、認知症やがんなどへの有効性に対する期待を反映した結果だった。
 GLP-1とは、食事の際に小腸の細胞から分泌されるホルモンで、血糖値の調整や食欲の抑制に関与する。デンマークのノボノルディスク社(ノボ社)や米国のイーライリリー社などが糖尿病治療薬として臨・・・

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