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連載

をんな千一夜 第94話

松平 豊子  自由を求めて「平民」に
石井 妙子

2025年1月号

 二〇二四年末より秋篠宮家の報道が相次いでいる。
 十一月に紀子妃殿下が談話を、十二月には秋篠宮が会見で、報道やネットでの「バッシング」に触れられた。
 皇族に対する無責任な発言が広がっており、とりわけ女性宮家や女性天皇をめぐる議論は年々、過熱している。
 天皇家に跡継ぎが望めなかった際に、世継ぎを提供するのが宮家の本来の役割だ。だが、現状では女系天皇を認めていないのだから、女性宮家を創設しても、子孫は天皇にはなれない。その矛盾は誰も気にしないのだろうか。
 男系男子が伝統だという主張もあるが、男系にこだわるならば、側室制度の復活も議論しなければならないだろう。
 多くの国民が「伝統」だと思っていることの多くは、明治になって作られたものだ。皇居からして、もとは徳川将軍家の江戸城である。
 そんなことを考えながら、新春を迎えるにあたって、徳川将軍家の子孫である松平豊子が書いた回想録、『春は昔―徳川宗家に生まれて』を読んだ。サブタイトルが示すように、著者は徳川宗家、すなわち徳川将軍家に生まれた女性である。
 大正二(一九・・・