会場に入るなり、立ったまま一礼したその表情は能面のように強張っていた。無表情の極みである。一般大衆など歯牙にもかけない自分が、なぜこんな羞恥に晒されなければならないのか。そんな胸中が透けて見えた瞬間だった。
　三菱ＵＦＪ銀行の行員が支店の貸金庫から十数億円相当の金品を盗んだ問題で、発覚から1カ月以上を経て開いた12月16日の記者会見。頭取の半沢淳一がようやく姿を現したシーンである。
　事件のあらましを簡単におさらいしておこう。
　舞台は同行の江古田支店と練馬支店（統合前の江古田支店を含む）、玉川支店の二カ店。2020年4月から24年10月までの4年半にわたり、支店の40代の女性行員が、顧客約60人の貸金庫から現金や貴金属を繰り返し盗み取った。貸金庫を開けるためには顧客が持つ鍵と銀行の鍵の二つが必要だが、貸金庫の管理責任者だった女性行員は支店で保管している顧客用のスペアキーを利用して開錠した。
　顧客からの申し出で銀行が調査を始め、女性行員を聴取したところ、犯行を認めたため明るみに出た。女性行員はその後、懲戒解雇となっている。
　銀行に・・・