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政治

「渡辺恒雄」とは何者だったのか

不世出「政界フィクサー」の功と罪

2025年1月号

 渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆が2024年末亡くなった。98歳。大往生である。「ナベツネ」の呼び名には、日本社会の愛憎がない交ぜになっていた。いや、愛は少ない。憎たらしいけど憎みきれない憎まれ役といった存在か。感情を排し、その功罪を論じるべき時である。
 最晩年までカリスマ性を保ったのは2020~21年、3回に分けて放映されたNHKの特別番組『独占告白 渡辺恒雄〜戦後政治はこうして作られた〜』の影響だろう。元NHK政治部記者の大越健介氏が計8回、約10時間のインタビューを行い編集した番組だ。
 大越氏は言い訳程度の批評めいた質問も少し挟みながら、専ら相づちを打つ聞き役で、ほぼ渡辺氏の言いたい放題。全体の印象は不世出の怪物政治フィクサー一代記である。聞き書きの渡辺回顧録はすでに何冊もある。それらの読者には何の新味もない話とすぐ分かるが、本を読まない視聴者はこんな大物だったのかと驚いたかもしれない。焼き直しを承知で作ったNHKは罪深い。大越氏はこれを勲章に、テレビ朝日の「報道ステーション」メインキャスターへ、推定年俸1億円超の華麗な転職を遂げた。ナベツネ・・・

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