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連載

現代史の言霊  第81話

1月の乱入- 東ドイツ「治安機関」襲撃事件 (1990年)
伊熊 幹雄

2025年1月号

私たちは完全武装している
ウラジーミル・プーチン(東独勤務時代)

 2024年の暮れ。中東に新時代を告げる政変が起こった。シリアで、親子2代続いたアサド家の独裁政権が崩壊し、バシャル・アサド一家がロシアに逃れた。
 急展開したシリア情勢の中で、筆者が注目していたのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の反応だった。
 より正確に言えば、「無反応」だ。12月16日に、ロシア国防省での演説で、西側に「これ以上、我が国を追い詰めるな」という趣旨のメッセージを送るまで、プーチン大統領は1週間以上、アサド体制崩壊について沈黙を続けた。独裁政権に対する民衆蜂起をすべて「西側の陰謀」と決めつける、「プーチン史観」である。

デモ隊と対峙したKGBスパイ

 この人物は、群衆が独裁政権に対して蜂起し、体制転覆に至る事件を何度も自ら経験してきた。そしてその都度、苦々しい思いで事態を見つめてきた。
 彼の原点が1989~90年にかけての・・・