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連載

本に遇う 第300話

変える人と変えぬ人
河谷 史夫

2024年12月号

 新聞の歌壇・俳壇欄は時々折々を反映する。毎日歌壇で岡田マチ子作〈石破さんが行方不明に 一議員時代の正義かなぐり棄てて〉というのを読んだ。
 第一席にした選者の米川千嘉子が、「あの石破茂さんはどこへ行ってしまったのか。『正義』というか、ある種のまともさへの期待があったのでは」と評していたが、何がしかの期待をかけた人は石破の豹変に肩すかしを食らって気持ちが離れたに違いない。
 野党ときちんと議論してから総選挙をすると言っていたのに、組閣後あっという間に衆議院解散に出たのをはじめ、石破は総裁選中の発言を次々と覆した。
「君子豹変」とは、『易経』の「その文蔚たる(斑紋が華やかに美しくなる)なり」から出ていて「本来は、誤ったと知ったらすばやく見事にただす優れた人を評価する語」だったが、転じて「意見や態度をころっと変えること」と『岩波四字熟語辞典』にある。
 つまり変節漢のことだ。日常生活でも言動を変えるやつは信用できない。それも目先の利益にかられているのは見苦しい。新内閣への御祝儀相場で集票できると踏んだのだろうが、そうは問屋がおろさなかった。惨敗は石破・・・

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