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社会・文化

野生動物「逆襲の時代」が到来

獣から人里を守るのは誰か

2024年12月号

「パーン」。乾いた銃声が響いた。ササやぶの中から頭を上げたクマの首筋が射抜かれ、スイッチを切ったように崩れ落ちた。
 撃たれたクマはまだ細身の若い個体。「三歳くらいかな。なんでこんな人里に出て来たんだろう。山に食い物がないわけでもないのに」。慎重に絶命を確認し、猟歴三十年余りというベテランハンターは、ようやく緊張を解いた。現場は木立の中のやぶだが、周囲には畑が広がっている。
 全国的にクマやイノシシ、シカの畑荒らしや市街地侵入が相次ぎ、深刻な問題となっている。
「見てくれ、この荒らし方」。北海道のビート農家が示す畑では、畝がなくなるほど踏み荒らされ、ビート苗が食われている。被害はざっと五十メートル四方。テニスコート十面分ほどが裸地になった。畑の一部とは言え、損失は大きい。
「エゾシカさ。奴ら、日が沈んだら銃が撃てないのを知っていて、群れが夕暮れから出勤しやがる」
 晩秋から冬にかけての狩猟期とは別に、農地を荒らし、人や生態系に害を与える野生動物は、被害の申請と市町村の許可により銃やワナで通年「駆除」(許可捕獲)ができる。銃が撃てるのは日・・・

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