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社会・文化

非難囂囂のオペラ 「影のない女」

前代未聞「大ブーイング」の舞台裏

2024年12月号

 十月二十四日午後九時前、その事件は起こった。上野の東京文化会館大ホールで猛烈なブーイングが飛び交ったのだ。演出家ペーター・コンヴィチュニーがカーテンコールに現れるや頂点に達し、天井桟敷からは「金返せ」の罵声まで。翌日から三日間も大荒れのまま、舞台は千秋楽に至る。聴衆の怒りはSNS上に拡散、個人ブロガーからオペラ関係者、大手新聞音楽記者、評論家まで巻き込み、侃々諤々の論争が続いた。

女性差別「回避」の荒業

 ドイツの演出家ペーター・コンヴィチュニーを起用し、東京二期会がリヒャルト・シュトラウス作曲《影のない女》をボン歌劇場と共同新制作すると発表されたのは、コロナ禍前のことだった。二〇二二年二月の都民芸術フェスティバル文化事業として、新制作オペラとしては廉価なチケットも発売される。だが再三の水際対策強化で外国スタッフの来日がならず上演は頓挫、宮本亞門演出《フィガロの結婚》に差し替えられた。世界のオペラ専門家も注目する舞台を実現すべく、億単位は必要な制作費から失われた東京都提供資金を補填するクラウドファンディング・・・

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