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経済

セブン&アイ 「九兆円MBO」の夢幻

伊藤家を煽ったのは誰々か

2024年12月号

 カナダの小売り大手、アリマンタシォン・クシュタール(ACT)から買収提案を受けているセブン&アイ・ホールディングスが、とんでもない奇策に打って出た。MBO(経営陣の参加する買収)をしようというのだ。その額はなんと九兆円規模だとか。いったいそんなカネを誰が出せるのか。
 十一月十三日、株式市場は大騒ぎになった。同日の午前中、米ブルームバーグと日本経済新聞電子版がともに「セブン&アイがMBO検討」と打ったからだ。日経新聞は「七兆円以上になる公算が大きい」と書いたが、ブルームバーグは「総額九兆円」と踏み込んだ。
 交渉に関わる金融機関関係者は「金額はまだ揺れ動いている。どちらが正しいかなんてまだわからない。ただ間違いなくとてつもなく巨額というのは確か」と言う。これまで日本における最大のMBOは昨年、大正製薬ホールディングスが発表した七千億円規模。セブン&アイのMBOはそれより大きいというか、ケタが一つ違う。
 それどころかMBOに限らず日本企業が関わったM&Aにおいて過去最大案件になる可能性が極めて高い。これまでの最大案件は二〇一八年、武田薬品工業が約七兆円で・・・

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