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連載

大往生考 第60話

「面会制限」という酷薄
佐野 海那斗

2024年12月号

 コロナが流行する季節がやってきた。院内感染を予防するため、病院は入院患者の家族の面会を制限するだろう。入院患者の心の寄る辺は家族との接点だ。いかにして家族の面会の機会を維持するか、コロナパンデミックの最中も、世界の医学界は侃侃諤諤の議論を続けてきた。 
 例外は日本だ。今に至っても漫然と面会制限を続けている。例えば、東京大学医学部附属病院では、面会は一日一回二人まで、六十分以内に制限される。病院で最期を迎える患者にとっては、耐え難い苦痛であり、家族には深い悔恨が残る。血も涙もない面会制限を続ける道理は、どこにもない。
 知り合いの五十代半ばの内科医も酷い体験をした。都内の勤務医で、八十代の母親、妻、二人の娘の五人で暮らしていた。
 母親に対する彼の思慕は深い。小学校の時に父親が自殺し、女手一つで育てられたからだ。専業主婦だった母は、妹の夫の紹介で、地元の建設会社の事務員の職を得た。彼女は生活費を切り詰めながらも、息子の教育にはお金を惜しまなかった。
 知人は私立の進学校から、地方の国立大学医学部へと進む。在学中は月七万円の仕送りを受けた。バイト・・・

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