テイレシアスの食卓 vol. 21
なんぞや「マリアージュ」とは
河井 健司
2024年12月号
秋は魂の季節、そうニーチェは言った。たしかに秋の夜長は、ゆっくりと思いふけるにうってつけだ。しかし、自己肯定を説いた孤高の哲学者とかけはなれた存在の、小商で身を立てる筆者にとって、野山が錦に染まれば、それは繁忙期の始まりの合図。さしあたり年が明けるまで、心に余裕を持つのは難しい。毎年のことながら年末を控えたこの時期が、なんとなく気忙しいのはフランスに居た頃と似ている。
パリでは一般的に、新年度開始はヴァカンス明けの九月。フランスの雇用形態は、期間契約労働がその大半を占めるが、通例として契約終了時期はもっとも長い有給休暇、つまり八月のヴァカンス期を設定する。そんなわけでほぼ毎年、同僚の何人かは八月中に去ってゆくが、これにともない新しい顔ぶれもやってくる。職場に慣れていない新人への指導が業務に加わるとともに、はしりもののジビエなど秋の豊かな食材がメニュー上を賑わせ、新年度早々から調理場は、あれやこれやと慌ただしかった。
ところでジビエといえば、先ごろ開催された、とある団体主催の賞味会の画像を見て唖然とした。代金四万二千円で提供されるコース料理のメインはエゾシカを使・・・
パリでは一般的に、新年度開始はヴァカンス明けの九月。フランスの雇用形態は、期間契約労働がその大半を占めるが、通例として契約終了時期はもっとも長い有給休暇、つまり八月のヴァカンス期を設定する。そんなわけでほぼ毎年、同僚の何人かは八月中に去ってゆくが、これにともない新しい顔ぶれもやってくる。職場に慣れていない新人への指導が業務に加わるとともに、はしりもののジビエなど秋の豊かな食材がメニュー上を賑わせ、新年度早々から調理場は、あれやこれやと慌ただしかった。
ところでジビエといえば、先ごろ開催された、とある団体主催の賞味会の画像を見て唖然とした。代金四万二千円で提供されるコース料理のメインはエゾシカを使・・・