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連載

現代史の言霊  第80話

十二月の終焉- ベルリンの壁崩壊㊦ 米ソ首脳マルタ会談(一九八九年)
伊熊 幹雄

2024年12月号

世界は一つの時代を克服した
ミハイル・ゴルバチョフ (ソ連共産党書記長)

 ベルリンの壁の物語は、一九八九年十一月九日の「崩壊の日」が一つのクライマックスだった。東独市民、さらに西ベルリン市民が一斉に壁に集結し、壁を壊したり、よじ登ったり、検問所を車で越えたりと、数百万人が一斉に国境に向けて動き、越境した。
 相当数の市民は、東独ブランド「トラバント」の小さな車体に、荷物を満載して出発した。東独に戻らないと覚悟を決めて、一家で国を捨てていったのである。
 ここからは「その日」以降の話である。ヘルムート・コール西独首相を筆頭に、国際政治の指導者たちには、考えなければいけないことが山ほどあった。

「不可避の運命」の影

 最も切迫していたのは、「壁崩壊後の東ドイツはどうなるのか」という問題だった。壁崩壊当日(十一月九日)の衝撃が収まらないどころか、日を追うごとに「不可避の運命」の影が大きくなった。
 それは隣国であり、冷・・・

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