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イランとサウジ 「急接近」の奇怪

トランプが起こす中東「地殻変動」

2024年12月号

 来年1月のトランプ再来が決まり、中東の空気はどこか重苦しい。2017年、一期目の就任の際、トランプ大統領は最初の外遊先にサウジアラビアを選び、盛大な歓迎を受けた。当時の歓喜とは対照的に、今回は中東諸国の反応は冷ややかで、むしろ警戒感が目立つ。
 一期目のトランプ政権時代、サウジはカタールとの国交を断絶し、強硬路線に走った。背後にはトランプ政権の支持を得た自信があった。しかし、今回のサウジはかつての対立国イランとの関係改善に向けて奔走する。中東の各国は、再び訪れるトランプ政権に備え、新たな動きを見せ始めている。トランプ2・0が親イスラエル派やイラン強硬派の人物を主要ポジションに指名したことで、アラブ諸国の当局者たちは、米国がイスラエルによる占領地であるヨルダン川西岸の併合、ガザ占領、イランとの緊張のエスカレーションを容認するのではないかと危惧している。

イランの脅し

 サウジアラビアの外交姿勢は劇的に変化している。強硬路線から融和政策へ。その転換は、経済的安定を求める切実な理由からだ。サウジ王宮府関・・・