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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》喫煙科学研究財団

健康被害「促進」JTの魔窟

2024年11月号

 主力商品が健康を害すると言われながら経営基盤は堅固で、商品が一切登場しない企業イメージ向上のためだけのテレビCMを流す体力もある。本来なら苦しいはずのJT(日本たばこ産業株式会社)を財務省と国内最高峰の大学医学部およびその出身医師が支える構図には、国民の健康より省益、学益、私益を優先するエリートの腐臭が漂う。その見えにくい実態は、公益財団法人「喫煙科学研究財団」の内情から浮かび上がる。
 一九八六年に当時の大蔵省の許可で発足した喫煙科学研究財団のホームページでは「喫煙等に関する科学的な調査研究の助成等」を主たる事業と説明する。「あくまでも医学等の学術活動の振興、科学技術の開発」が目的だという説明を額面通りに受け取れない理由は、財団設立を主導したのがたばこ利権の中心であるJTだからだ。
 設立時に集まった寄付金十一億三千万円のうち九億九千百万円がJTからで、それ以外も、たばこ関連の香料やフィルターの材料メーカー、配送会社、印刷、製紙業界などからの寄付だった。
 当時、JTは窮地に立たされていた。一九八五年に日本専売公社が民営化されて生まれたJTは、それまで・・・

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