秋の夜は長い。灯火親しむ候であるが、「読書の秋」という言葉は、今や死語辞典入りかも知れない。文化庁の国語に関する世論調査によると、月に本を一冊も読まない人が10人に6人を超えたそうである。街中から本屋が消えるはずだ。新聞も売れない。グーテンベルクの時代は速やかに去りつつあるとの感を深くする。
　本はスマホに取って代わられたとある。スマホで飛び交うのは短文ばかりだ。長い文章を読むのに必要な読解力や想像力が欠落していて、自分には関心のない情報を避ける人が増えているのではないか、と評論家が分析している。
　時代遅れと言われようと、柔軟性の無さを嗤われようと、スマホは使わない。外界との媒介手段は本と新聞とラジオとテレビだ。いまさら流儀は変えられない。明治の初め、時代になじめぬ頑迷な旧世代は天保老人と呼ばれてばかにされたそうだが、本と切り抜きの山にあくせくしている姿なぞさしずめ昭和老人であろう。
　それにしても新聞の一面に戦場のルポが載り、テレビで空襲に逃げ惑う人々の姿を見る日が来ようとは思わなかった。ウクライナの戦争は終わらず、ガザからの悲報がつづく中東では、レ・・・