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社会・文化

日本の科学アラカルト 171

宇宙開発のコストを大幅削減 「マイクロ波ロケット」の可能性

2024年11月号

 新たな冷戦構造が生じる中、宇宙開発競争も激化している。宇宙空間を利用した技術は、GPS(全地球測位システム)に代表されるように、軍事的な利用価値も高い。かつてと異なるのは、宇宙開発の現場で、国だけでなく企業の存在感が増していることだ。
 電気自動車大手のテスラの創業者であるイーロン・マスク氏は宇宙ビジネスにも熱心。ウクライナ軍にも提供された衛星通信サービス「スターリンク」は、マスク氏が率いるスペースX社のサービスだ。同社は十月、大型ロケットを打ち上げ後、切り離された一段目を、発射台近くまで戻して回収することに成功した。発射台から伸ばしたアームでブースターを捕まえる様子は、まるで箸でブースターをつまんだかのようだった。
 人工衛星を中心とした宇宙ビジネスは今後も確実に伸びるフロンティアであり、日本が参入する余地もいまだに残されている。
 人工衛星打ち上げビジネスのネックは、なんと言ってもコストだ。1キログラムの物体を軌道上に乗せるためのコストは、数十万円とも数百万円とも言われる。
 今年7月、打ち上げに成功した日本の新型ロケット「H3」は、一回当・・・

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