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経済

田辺三菱製薬に迫りくる「終焉」

投げ売り「解体」の末路

2024年11月号

 我が国を代表する名門製薬企業である田辺三菱製薬の前途が多難である。親会社である三菱ケミカルグループが売却を検討しているのだ。9月9日、日本経済新聞が報じ、「多額の開発費が重荷」と背景を伝えた。現在は経営が順調な田辺三菱だが、近い将来、主力薬の特許が切れ、暗雲が垂れ込める。売却されると、企業として終焉の危機すらあり得るのだ。
 日経報道を受け、三菱ケミカルグループは「そのような事実はない」との声明を発表した。だが、「売却を含めたあらゆる選択肢を念頭に置いてポートフォリオ改革を推進している」とも記しており、売却に含みを残した。
 2007年に田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併して誕生した田辺三菱が、三菱ケミカルの完全子会社になったのは20年である。前身の田辺製薬は江戸時代以来の大阪道修町の老舗、三菱ウェルファーマは、戦前創業の吉富製薬や三菱の医薬品グループの系譜を継ぐ。同社の上野裕明代表取締役は、現在、日本製薬工業協会の会長だ。
 田辺三菱の経営は23年度(24年3月期)決算によれば、売上収益は4374億円(前年同期比18.3%減)、営業利益は689億円(同・・・

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