金融の世紀
第23回【バンクアメリカード、全米進出に乗り出す】
黒木 亮
2024年11月号
1958年から59年にかけてバンク・オブ・アメリカが行なったクレジットカードの無差別散布は社会に弊害と混乱をもたらし、メディアや市民から批判された。議員からは「借金志向を助長し、道徳、財政、公共の福祉に悪影響を及ぼす」という手紙や報告書が届き、教会の牧師も、日曜礼拝の説教で、クレジットカードを公然と非難した。大型小売店は、六パーセントの加盟店手数料に憤慨し、警察はクレジットカード詐欺という、未知の犯罪の取り締まりを余儀なくされた。
クレジットカード事業の責任者のジョセフ・P・ウィリアムズは、元々顧客サービス調査畑出身で、融資の経験がなく、顧客の善良さを信じすぎたと批判され、事業開始から15ヶ月後の1959年12月、辞職した。
行内外で高まる非難と拡大する一方の赤字を前に、バンク・オブ・アメリカの経営陣は、クレジットカード事業を継続するか、それとも打ち切るかの決断を迫られた。事業の立て直しの可能性や方法について確信をもって提案できる者は皆無で、行内の誰もが関わりを持ちたがらなかった。
しかし、1954年以来バンク・オブ・アメリカのCEOを務めるクラー・・・
クレジットカード事業の責任者のジョセフ・P・ウィリアムズは、元々顧客サービス調査畑出身で、融資の経験がなく、顧客の善良さを信じすぎたと批判され、事業開始から15ヶ月後の1959年12月、辞職した。
行内外で高まる非難と拡大する一方の赤字を前に、バンク・オブ・アメリカの経営陣は、クレジットカード事業を継続するか、それとも打ち切るかの決断を迫られた。事業の立て直しの可能性や方法について確信をもって提案できる者は皆無で、行内の誰もが関わりを持ちたがらなかった。
しかし、1954年以来バンク・オブ・アメリカのCEOを務めるクラー・・・