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連載

現代史の言霊  第79話

11月の誤解 - ベルリンの壁崩壊㊥ (1989年)
伊熊 幹雄

2024年11月号

私が知る限り、即刻だ
ギュンター・シャボウスキー(東ドイツ社会主義統一党幹部)

 歴史上の大事件の多くは、偶然に始まったように見えて、偶然ではない。事件が起きる条件が十分以上に煮詰まっていて、ある機会に突如はじけるものだ。1989年11月9日の「ベルリンの壁崩壊」もこのように進んだ。
 事件の引き金は、東ベルリンの社会主義統一党(東独共産党)の本部でのこと。スポークスマン役のギュンター・シャボウスキーが、国際記者団の多くの質問を浴びていた。会見は、「東西両独の往来の自由」がいつになるのかが最大の焦点だった。
「東欧革命」の波はこの時までに、共産主義の最も堅固な要塞であるはずのドイツ民主共和国(ドイツ語略でDDR=東ドイツ)さえも襲っていた。

特殊な国の普通の人たちの革命

 仕掛けたのは、ソ連共産党のミハイル・ゴルバチョフ書記長だ。
 ただし、ソ連の裏工作の狙いは、エーリッヒ・ホーネッカーを追放することだけだ。若手で・・・

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