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ベネズエラ発「難民ギャング」の猛威

米州各国に拡散する「凶悪組織」

2024年11月号

 米コロラド州デンバー郊外の閑静なベッドタウン、オーロラで8月下旬、帽子やパーカーのフードを目深にかぶり、自動小銃や拳銃を携えた6人前後の男が白昼に低層アパートの一室になだれ込んだ。その様子を捉えた防犯カメラ映像が今、米国民を震撼させている。南米ベネズエラ出身のギャングが住民を追い出し、アパート群を占拠しているといううわさがSNSを中心に瞬く間に広がった。不法移民排斥を掲げて大統領選を戦うトランプ前大統領が「ベネズエラの刑務所で生まれたギャングにより、オーロラは戦場と化した」と主張するなど、一気に問題化した。
 トランプ氏の発言は、身内である共和党の地元市長が「複数のアパートが占拠されているという事実はない」と打ち消すなど、例に漏れずフェイクや誇張が多々含まれている。しかし、ベネズエラの新興ギャング「トレン・デ・アラグア(TdA)」が米州全体を脅かす存在になりつつあることだけはまごうことなき事実である。

約八百万の難民に紛れて

 TdAはベネズエラ北部アラグア州トコロンの刑務所で興った犯罪組織だ。2・・・

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