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《世界のキーパーソン》 パヴェル・ドゥーロフ(ロシア人起業家)

逮捕で謎呼ぶ「テレグラム」創設者

2024年10月号

 ネット犯罪で逮捕―。こんな情報は今どき、ニュースにもならないが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が自らのSNSで、この人物の「逮捕」を発表したとなると、ただならぬ事件であることが分かる。拘束されたのは、インスタント・メッセージ(IM)大手「テレグラム・メッセンジャー(通称テレグラム)」の開発者、パヴェル・ドゥーロフだった。今年8月のことである。
 テレグラムは日本語版こそないが、60以上の言語で、ざっと10億人が使っている。
 最大の特徴は秘匿性で、メッセージを暗号化した上、一定時間後に跡形もなく消える。犯罪者のように身分を隠したい人には最適のアプリとして、2013年に開発された後、あっという間に世界中に広がった。ロシアを筆頭に、旧ソ連圏の国々では最も愛用されるSNSだ。
 秘匿性が高いことを悪用され、児童ポルノなど、違法コンテンツもテレグラムに氾濫するようになった。今回フランスで逮捕されたのは、児童ポルノ関連の複数の容疑によるものだ。
 パヴェルは1984年、レニングラード(現サンクトペテルブルク)で生まれた。高名な文献学者を父に持ち、・・・