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ウクライナの「戦後」は危うい

アンドレイ・クルコフ(ウクライナ人作家)

2024年10月号

―長引くロシアの侵略で、ウクライナ社会はどう変わりましたか。
 クルコフ 二年前は皆が戦争のことばかり話していたが、展望の見えない膠着が続いているため、いまはニュースを遮断し、他のことに関心を向けようとする傾向がある。そして、状況を変える何かを静かに待っている。それはウクライナの勝利に向けた欧米の全面的な支援や停戦交渉、またはプーチンの死かもしれない。
―前線に近い地域とそれ以外で意識の違いはありますか。
 クルコフ 当初の団結ぶりと比べれば、分裂してきた面はあるだろう。西部の田舎町では女性たちが夫や息子の動員に激しく反対している。キーウで戦争を無視する風潮が強いのは、公務員やIT関係者が多く、動員を免れているからだ。頻繁に攻撃されている北東部ハルキウなどでは侵略者に抵抗する強い意思を見せている。一方で、国外避難者の大半は帰国を望んでいたが、その割合は減っている。それでも、前線の軍部隊や病院、避難民への市民のボランティアや寄付、支援活動は持続している。
―世論調査によると、交渉による停戦を求める声も増えているようです。
 クルコフ 街頭・・・

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