三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

「兵庫県」はなぜこうなるのか

悪評知事が沈んだ「風土と歴史」

2024年10月号

 風土と歴史は、地域の産業、文化、政治を規定し、人材を育てる礎だ。四十七都道府県、一千七百超の市町村で、それぞれ違う。齋藤元彦知事(失職)のパワハラ問題で揺れる兵庫県では、希薄な県民意識、地域間の溝、暴力団、被差別部落、労働組合、過疎地という複雑な要素を管理する能力が求められるのに、齋藤も、齋藤を支援してきた日本維新の会も、それを肌感覚として分かっていなかったことが「失敗」の底流にある。
 希薄な県民意識は、兵庫県出身者が「神戸っ子」「芦屋市民」「淡路島出身」「播州人」とは言っても、「兵庫出身」と言わない点に表れている。大阪に隣接した「兵庫府民」の感覚もあり、県政への関心は薄く、岩盤支持層はできにくく、時々の状況で吹く「風」で政党や政治家への支持が変動する。
 二〇二一年七月の兵庫県知事選挙で、齋藤が総務省の先輩で県副知事経験者の金沢和夫に約二十六万票差で圧勝したのも、「風」の力だった。メディアは関西での維新の会の人気を勝因として強調したが、このところ県内の市町村の首長選挙で維新は連戦連敗中だ。直近の西宮、尼崎、宝塚、姫路の各市長選で維新の候補は全敗、神戸、明石、加・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます