三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

出産「保険適用」は亡国政策

産科医療「崩壊」で少子化助長

2024年10月号

 利用者には良策に見えても、サービスの提供者を困窮させることがある。たとえ、公的資金の介在があっても―。政府が少子化対策の一環として二〇二六年度を目処に正常分娩での出産費用の保険適用を進めていることに、日本産科婦人科学会をはじめ医療界から強い懸念が示されている。
 一九六一年の国民皆保険制度の開始以降、出産は妊娠中毒症など治療が必要な場合を除き「疾病ではない」ため、病気治療が対象の健康保険は正常分娩には適用されなかった。これを見直す議論が厚生労働省の検討会で始まったのは、今年六月二十六日だった。
 九四年の出産育児一時金制度の導入で、公的健保が分娩費用を支払うようになった。金額は当時の国立病院の平均分娩料二十六万四千円、産前産後の健診費用二万七千円に育児の初期費用を加え、三十万円。何度かの増額を経て二〇二三年四月からは五十万円だ。ただ、保険適用ではなく、あくまで自費診療で、医療機関が自由に値を決める仕組みは維持された。
 厚生労働省によると、二二年度の公的病院の分娩費用の全国平均は約四十六万三千円で、東京都は約五十六万二千円、最も安い鳥取県は約三十五万九千・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます