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経済

NTTが外資に売り渡す「基地局鉄塔」

「通信の主権」が中国に奪われる亡国

2024年10月号

その名を聞いて、総務省のある幹部はこう鼻白んだ。
「JTOWER? イー・モバイルの残党ではないか」
 携帯電話の基地局鉄塔の運営会社、JTOWERは八月十四日、米国のインフラ投資ファンド、デジタルブリッジによるTOB(株式公開買い付け)を受け入れると発表した。大株主のNTT(日本電信電話)も賛同しており、一株三千六百円の買付価格、十月十日が期限のTOBは成立する見通し。同社は上場廃止となるが、その後も経営陣はとどまるという。
 しかし、このディールにNTTの不見識を指摘する声は多い。なぜなら、JTOWERが保有する六千基近い鉄塔の大半は、NTTドコモが建設した設備だからだ。二〇二二年三月と昨年九月に結んだ譲渡契約に基づき、現在、合計七千五百五十四基もの鉄塔がドコモから順次移管されているところである。それが、TOBによって外国資本の手に落ちる。果たしてJTOWERの社長・田中敦史とは何者か―。
 田中は、かつて存在した第四の携帯キャリア、イー・モバイルの経営企画担当常務を務めていた人物。同社は第二電電(現KDDI)創業の立役者、千本倖生が設立し、・・・

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