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ドイツ自動車産業を襲う「多重危機」

経済不安と極右台頭の暗雲

2024年10月号

 欧州最強のドイツ産業界が大揺れだ。中でも看板の自動車産業は、中国などアジアの新興工業国に押されて、重大な危機に陥っている。オラフ・ショルツ首相と与党・ドイツ社会民主党(SPD)にとっては、ドイツの労働者の暮らしに突然、暗雲が垂れ込めたような事態である。ドイツ製造業と政界はこの状況を突破できるのだろうか。

企業城下町でのリストラ表明

 二〇二四年九月は、ドイツ経済史で後々まで語り継がれる月になるだろう。
  自動車大手「フォルクスワーゲン(VW)」が一九三七年の創業以来初めてドイツ国内の生産拠点の一部閉鎖やリストラを行う意向を明らかにした。 VWは世界中で二十万人以上を雇用し、ドイツ国内では約十二万人を雇っている。会社名はそもそも「国民車」を意味する。
  自動車産業界が逆風に見舞われている時でも、VW経営陣は「ドイツ国内の雇用は必ず守る」と公言してきた。VWは、世界経済危機の最悪の時期でさえ、雇用調整などにより、本体の雇用を最大限守ってきた。
 それが一転して、経営陣から「国内・・・

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