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連載

をんな千一夜 第91話

富本 一枝 一徹だった「新しい女」
石井 妙子

2024年10月号

 本号が出版される頃には自民党の新総裁が選ばれている。
 女性も社会に出るようにと突如、自民党は言い出し、同時に少子化対策を口にする。女性たちが産まなくなったのは高学歴になったから、働くようになったから、と少し前まで言っていたことは忘れてしまったのだろうか。前々から女性たちの声に耳を傾けていれば、もっと良い世の中になっていたのではないか。そんな悲憤に駆られたのは、最近出版された尾竹紅吉こと富本一枝の著作集『新しい女は瞬間である』を読んだせいであるのかもしれない。
 青鞜の異端児として前半生だけを語られがちな一枝だが、著作集を読み、初めて彼女の全人生と、生涯をかけて、真面目に自分を生きようとした姿勢に胸打たれた。
 一枝は1893(明治26)年、画壇で活躍した尾竹三兄弟の長男にあたる日本画家の越堂と、富山藩士の血を引く母ウタの長女に生まれ、8歳から大阪で暮らした。
 父は長女の一枝を女流日本画家にしようと考え自ら教授したが、一枝には苦痛でしかなかったという。彼女が惹かれたのは小説で、親の目を盗んでは図書館に通って乱読した。
 早熟な文学少・・・